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映画×お金

​2016年10月15日 

編集:橋本優希(ARCスタッフ) 回答:篠原隼士(ARC代表プロデューサー)

 そもそも第一回で伝えるべきだと反省したが、このコラムの場、映画を志す人たちが多くいて、その人たちの創作の幅が広がったり、勇気を貰ったりそんな文章の場所があればいいと思い企画した。本当はその道をもっとこよなく愛し、経験する「様々な人々の言葉が集う」ことを目標としているが、とりあえず、ARCという場所がいかにして映画に辿り着き、どのような考え方で映画に向き合うのかもう少し時間を貰わなくてはならず、スタッフから「お金」というテーマを宿題にされ深夜パソコンに向かって篠原がこの文章を打っているわけで。手探りなこのコーナーは色んな意見を元にもっと成長を遂げたいと思うが、担当のスタッフから以下のような大まかな「疑問」を貰ったので、今回はそれをサブタイトルとして、私個人の意見を書いてみる。

 

映画を製作するにあたって一番お金を使うところはどこか?

それが分かればプロデューサーはいらないだろうなとふと思った。それを決めるのがプロデューサーの仕事でありその映画の価値を左右すると感じる。例えばその映画を「映画祭」という場所に連れていくのか・・・とか、興行収入に直結させるためのマスコミなのか・・・グッズなのか・・・つまりその映画の行先をしっかり考えると次第とどこにお金を使うべきなのかが見えてくる。我々が昨年制作した映画『カラス姫』の場合、行先は賞でもなく名誉でもなく「子ども達の心を動かす」ということだけだったので、黒字という前提を取っ払い、多くの子ども達に届けるための宣伝にお金をかけた。演出費用で言うとやはりスタジオ、劇中音楽作曲費、劇場公開費がかかっている。それで目標達成できればいいのだが、子ども達の動員は100人超えておらず、今後もお金をかけて公開する必要はあると思い悩む日々。

映画を製作するにあたってお金はどういう集め方をしているか?

大きな映画だと(ここではあえて商業映画という。)製作委員会制度が一番多い。つまりスポンサーがお金を出してくださる。そのお金の中に、制作費はもちろん、監督のギャランティも含まれる。一本の映画を撮るのに数年かけている監督さんだと、一本何百万なのかな・・・と考えただけでゾッとする日本の映画産業。監督業だけでなく、映像業界が時給換算すると全員が青ざめると言っても嘘ではないほど「労働時間」と「給料」のバランスがおかしい。ARCだとスポンサーは基本つかない。というか、independentという精神においてお金は自力であるべきだと考える。自力で集まったお金、自力で協力をお願いするスタッフ、キャスト、そういう汗臭い苦労がやはりいつまで経っても大事だと思う。ええと・・・なので、このどういう集め方? という問いには「自力で集める」と答えておく。

映画一本製作するのにいくらかかるか?

ピンキリ。ピンキリ。ピンキリ。0円で撮る方もいらっしゃる。兆円単位の方もいらっしゃる。

ただ、我々はやはり映画に限らず芸術という場所での「仕事」がもっと潤うべきだとは常日頃思う。その精神を持っているので何とか「人件費」を確保することを大切にする。だから・・・すごく大雑把な計算をすると、ロケ5日間の自主映画撮影だと、撮影、照明、録音、ミキサー、美術、メイク、制作、助監督、監督、編集、音効、デザイナー、一人当たりに日当2万円(相当安い)支払うと、人件費だけで120万はかかる計算になる。これにキャスト+ロケ地+機材+雑費でやはり200万ほどはかかるのでは?

あれ・・・これ大丈夫かな・・・一概には言えない、以上!

仕事の依頼で映画製作の話が来たら、だいたい相場はどれくらいのギャランティか?

これは僕が監督しかやったことがないので、あくまで監督という立場での意見だが、手配業務(=つまり兼プロデューサー)も込みだとすると、100万で60分ほどの映画に立ち向かえる。いやかなりギリギリだが。

または、日当1万のバイト価格で受けて、興行収入の**%を貰うという交渉方法もある。

人を雇うのにかかるお金は?

人を雇うという感覚は全くない。一緒に飯を食い時には血を流しながら見えない向こう岸に辿り着くための船乗りを探しているだけ。キャストも同じ。なのでこの質問はノーコメント。

 

質問に応えているだけだと、何だかこのコーナー成立してるのか・・・と不安になるが、やはりお金ということは一概には言えない。そもそもお金が映画を動かすのでは無い。映画が人を動かし、そこに自然とお金が動き、そうやって世界は回るんだと感じる。なぜ映画が無くならないのか?

​それは映画を求める人がいて、映画を愛する人がいなくならないからだろう。そういうことを忘れてしまってはいけないとつくづく思う。
 

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